日本共産党と暴動事件の歴史的関係を再検証:暴力革命論から現代まで

2025/05/25

国内情勢 社会情勢 歴史を顧みる

t f B! P L

日本共産党と暴動事件の歴史的関係を再検証

日本共産党(JCP)と暴動・騒乱事件との関係については、戦後日本の政治史において繰り返し議論されてきました。本記事では、党の歴史的背景や具体的事件、公安の見解などを踏まえつつ、客観的にその関連性を検証します。

日本共産党と暴動事件の歴史的関係を再検証
日本共産党と暴動事件の歴史的関係を再検証

歴史的背景:戦後の混乱と共産党の台頭

第二次世界大戦終結後、日本は政治的にも社会的にも大きな混乱に包まれました。この混乱の中で、急速に存在感を強めたのが日本共産党です。GHQの占領政策と民主化の流れに乗り、労働運動や貧困層への支援を通じて支持を拡大していきました。

しかし、1950年代から1960年代にかけて、党内では「暴力革命」思想が一定の影響を持っていたとされています。これは、資本主義体制を打破するためには一定の武力闘争も必要とする理論であり、マルクス主義やレーニン主義に基づいた過激な思想の影響を受けたものでした。

代表的な事件とその背景

■ 渋谷暴動事件(1971年)

1971年11月、東京・渋谷で大規模な暴動が発生しました。この事件は、革命的共産主義者同盟全国委員会(いわゆる中核派)によるもので、直接的に日本共産党の関与は確認されていません。しかし、背景には沖縄返還協定への抗議という政治的要素があり、極左勢力全体の活動として注目されました。

中核派は共産主義を標榜してはいるものの、日本共産党とは思想的にも組織的にも大きく異なります。それでも一般的なイメージとして「共産主義勢力=過激派」との印象を社会に植え付けた事件であることは否定できません。

■ 田口事件

日本共産党員が関与したとされる事件の中で、特に注目されたのが「田口事件」です。これは、1960年代に警察官から拳銃や警察手帳を強奪しようとしたもので、一部報道では共産党員による犯行とされました。

事件の詳細については諸説あり、党としての公式な関与は否定されています。しかし、こうした個別の事件が「共産党=暴力的」とするレッテル貼りの根拠となったことも事実です。

現代における共産党の立場と公安の見解

現代の日本共産党は、暴力的な手段を一切否定しており、「民主的な革命」を党の基本路線としています。選挙や議会活動を通じて政権への影響を狙うという、いわば「体制内反体制」の立場を明確にしています。

一方で、公安調査庁や警察庁の見解では、日本共産党はいまだに「破壊活動防止法」に基づく調査対象団体とされています。これは党全体を「危険団体」とするものではなく、特定の活動や人物動向の監視を意味します。

たとえば公安調査庁の年次報告書(『内外情勢の回顧と展望』)では、共産党の動向について「非合法活動は確認されていないが、過去の経緯と継続的な情報収集の必要性から監視対象に含まれる」とされています。

敵の出方理論

日本共産党がかつて掲げていたとされる政治戦略のひとつで、相手(=政府や国家権力)の出方に応じて、平和的または非平和的な方法を選択するという考え方です。この理論は特に戦後の冷戦期、1950年代〜60年代にかけて党内外で議論された重要な概念です。

基本的立場:平時には選挙などの「合法的手段」で社会変革(=社会主義化)を目指すが、国家権力がそれを武力や弾圧で妨げてくる場合には、「非平和的手段(=暴力革命)」も排除しないという、いわば情勢に応じた柔軟な革命戦略。

語源・出典:「敵の出方」という表現は、日本共産党の党内文書や幹部の発言(例:1952年綱領草案や不破哲三の発言)で用いられました。また、1952年の「5月革命方針」では、党が暴力的手段に傾斜していたこともあり、敵の出方理論との関連が注目されます。

公安調査庁・警察庁の見解

公安調査庁は、日本共産党を現在でも「破壊活動防止法に基づく調査対象団体」としており、「敵の出方理論」によって、状況次第では暴力革命を否定しきっていないという見解を長らく持っています。

警察白書でも、「敵の出方理論」は、日本共産党が公式には暴力革命を否定しつつも、理論的には可能性を残すものとして記されています。

日本共産党の立場と反論

日本共産党は、近年ではこの理論について明確に否定しています。「暴力革命」「非平和的手段」は現代の党の方針にはなく、完全に議会制民主主義の枠内での変革を目指すとしています。また、「敵の出方理論」は公安側によるレッテル貼りや誤解であると主張しています。

「敵の出方理論」とは、暴力も含めた革命の可能性を否定せず、状況に応じて手段を選ぶという戦略論であり、現代の日本共産党はこれを否定しているが、国家権力側は依然として懸念を示している。

メディアとステレオタイプの影響

戦後から現代に至るまで、日本共産党と暴力革命のイメージは、時にメディアや大衆の認識によって増幅されてきました。実際には党としての暴力行為の実行は確認されておらず、多くの場合は個人の逸脱行為、または別組織(極左セクト)によるものであることが多いです。

おわりに:歴史的理解の必要性

日本共産党と暴動事件との関連は、単純な善悪や賛否では語れない複雑な歴史を持っています。特定の事件だけで全体を判断するのではなく、史料や多角的な視点に基づいた冷静な検証が求められます。

過去を知ることは、現在の民主主義や自由の価値を再確認する第一歩です。感情や印象ではなく、事実に基づく歴史認識を大切にしたいものです。

出典・参考文献
公安調査庁『内外情勢の回顧と展望』
警察庁「警察白書」
日本共産党公式サイトの党史・綱領に関する記述
倉田秀也『日本共産党の戦後政治』岩波書店
田村貞雄『共産主義運動と暴力革命の軌跡』中公新書
佐藤優『国家の罠』新潮社
塩田潮『日本共産党への手紙』文藝春秋
中西輝政 編『戦後日本の左翼運動と公安』PHP研究所
国立国会図書館「レファレンス協同データベース」内の関連記録
『朝日新聞』『毎日新聞』『読売新聞』など当時の報道記事(渋谷暴動事件、田口事件など)

このブログを検索

人気の投稿

ブログ アーカイブ

連絡フォーム

名前

メール *

メッセージ *

QooQ