防衛費増額と敵基地攻撃能力:民意との乖離(かいり)
日本政府は2022年末、防衛費を2027年度までに現在の約5兆円から43兆円超へと大幅に引き上げ、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有を明記しました。これは戦後日本の安全保障政策を根底から転換するものであり、平和憲法の理念との整合性が問われています。
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防衛費増額と敵基地攻撃能力 |
防衛費増額の概要
政府が打ち出した計画は、5年間で43兆円の防衛費を投入し、次のような装備・能力の強化を進めるというものです。
- 長射程ミサイル(トマホークなど)の取得
- サイバー・宇宙・電磁波領域の防衛体制の拡充
- 弾薬備蓄や司令部機能の強化
中でも注目を集めているのが、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の明記です。これは、敵国からのミサイル発射の兆候がある場合、自衛のために先制的に攻撃する能力を指します。
民意との乖離
世論調査に見る慎重論
- 毎日新聞(2022年12月):「防衛費の増額に賛成」…41%、「反対」…53%
- NHK(2023年1月):「反撃能力の保有に反対」…55%、「賛成」…36%
- 朝日新聞(2023年6月):「増税による防衛費拡充に反対」…61%
これらの調査結果から、多くの国民が防衛費の大幅な拡大や敵基地攻撃能力の保有に慎重・否定的であることがわかります。
なぜ反対意見が多いのか?
平和憲法との矛盾
日本国憲法第9条は、「戦争の放棄」と「戦力の不保持」を明記しています。反撃能力の保有は、事実上の先制攻撃につながる可能性があり、憲法の精神と相容れないという指摘が専門家からも出ています。
増税・福祉削減の懸念
防衛費の拡大には財源が必要です。そのため政府は、増税や社会保障費の見直しを示唆しています。これは、物価高や高齢化に苦しむ国民にさらなる負担を課すものであり、生活不安を招いています。
戦争リスクの高まり
敵基地攻撃能力を持つことで、他国との緊張が高まり、「攻撃される前に攻撃される」リスクが高まるという不安も根強くあります。実際、周辺国は日本の防衛強化に対し警戒感を強めています。
市民の運動と批判の声
- 「憲法9条を守る全国市民ネット」: 政府方針に反対する署名運動を展開。
- 「安保法制違憲訴訟の会」: 敵基地攻撃能力保有は「憲法違反」として訴訟準備。
- 地方議会の意見書: 一部自治体では、防衛費増額に反対する意見書を可決。
2023年には「軍拡よりも暮らしを優先すべき」と訴える集会が東京や大阪などで多数開催され、SNSを通じた市民の声も広がりを見せています。
国際的な文脈での位置づけ
日本は長年、「専守防衛」という理念のもと、戦争をしない国として国際社会における信頼を築いてきました。防衛費の拡大と攻撃能力の保有は、その立場を大きく転換するものです。
私たちにできること
- 防衛政策について正確な情報を収集し、共有する
- 意見表明・署名活動・地域の集会に参加する
- 地方議員や国会議員に直接、意見を届ける
結論
国の安全保障は重要です。しかし、それはあくまでも国民の命と生活を守るための手段であるべきです。防衛強化という名のもとに、民主主義の根幹である民意が無視されることがあってはなりません。私たち一人ひとりが声をあげ、政治に「NO」を伝えることこそ、平和の第一歩です。
出典・参考文献毎日新聞「防衛費増額に関する世論調査」(2022年12月)
NHK「反撃能力保有に関する世論調査」(2023年1月)
朝日新聞「防衛費と増税に関する世論」(2023年6月)
防衛省「国家防衛戦略(2022年改訂版)」
憲法学者・長谷部恭男「専守防衛の崩壊について」(2023年講演)
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