スムートホーリー法と世界恐慌:歴史から学ぶ経済の教訓

2025/04/05

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スムートホーリー法と世界恐慌:歴史から学ぶ経済の教訓

The Great Depression
The Great Depression

今回は、1930年代のアメリカで起きた「スムートホーリー法」と、それが世界恐慌に与えた影響について、わかりやすく解説します。歴史的な出来事を通じて、経済や貿易の大切な教訓を探ってみます。

スムートホーリー法とは何だったのか

1930年、アメリカ議会で、スムートホーリー法(Smoot-Hawley Tariff Act)という法律が制定されました。この法律は、膨大な数の輸入品に高い関税をかけるもので、農業や製造業を守るために外国製品を締め出す狙いがありました。生活必需品や工業製品にも関税が課され、その税率は平均で40〜50%に達するほどでした。

表向きは国内の雇用を守るための善意の政策に見えたものの、背景には単なる経済的な理由だけではない、もっと複雑な動機が潜んでいたかもしれませんね。

背景を少しひも解いてみましょう

この法律が作られた時代には、1929年の世界恐慌という大きな経済危機がありました。株価の大暴落で失業者が急増する中、政府は短期的な解決を求め、保護貿易という道を選びました。でも、結果としてその選択がどれほど適切だったのかは、少し距離を置いて考える必要がありそうです。たとえば、この政策が一時的な安定をもたらした一方で、他にどんな影響を及ぼしたのでしょうか?

国際社会への影響

スムートホーリー法の影響はアメリカ国内にとどまらず、世界に広がりました。他国も対抗して報復関税(報復措置)を導入したため、国際貿易が縮小。それにより、アメリカでも輸出が停滞し、本来の目的である「国内産業の保護」とは裏腹に、逆に経済的打撃を招いてしまったんです。結果的には、この法律が恐慌の原因ではなかったものの、回復を複雑にした一因として認識されています。

教訓としての側面

この出来事は、短期的な利益を追求した政策が長期的には損失をもたらす場合もある、という教訓になりました。その後、1934年には自由貿易を推進する「相互通商協定法」が制定され、アメリカは国際協力の重要性に目を向けるようになりました。でも、この変化が本当に「学んだ結果」なのか、単なる流行の変化だったのかは、今も議論が続いています。

要するに、スムートホーリー法が示しているのは、保護貿易と国際協調の間で揺れる政策決定の難しさ。そして、経済と政治がどれほど絡み合っているかということですね。

出典・参考文献
Irwin, Douglas A. *Peddling Protectionism: Smoot-Hawley and the Great Depression*. Princeton University Press, 2011.
   - スムートホーリー法の背景、影響、誤解についての詳細な学術的分析。
Eichengreen, Barry. *Golden Fetters: The Gold Standard and the Great Depression, 1919–1939*. Oxford University Press, 1992.
   - 金本位制と世界恐慌の関係を論じ、スムートホーリー法の国際的影響にも言及。
Kindleberger, Charles P. *The World in Depression, 1929–1939*. University of California Press, 1973.
   - 世界恐慌の原因と波及効果についての古典的研究。保護主義政策の問題点を包括的に解説。
United States Congress, *Smoot-Hawley Tariff Act of 1930*. Public Law No. 361, 71st Congress.
   - 法律原文。1930年6月17日施行。
Madsen, Jakob B. “Trade Barriers and the Collapse of World Trade During the Great Depression.” *Southern Economic Journal*, vol. 67, no. 4, 2001, pp. 848–868.
   - 世界貿易縮小における関税政策の因果関係を数量的に分析。
Baldwin, Richard E. and Evenett, Simon J., eds. *The Collapse of Global Trade, Murky Protectionism, and the Crisis: Recommendations for the G20*. CEPR, 2009.
   - 歴史的保護主義政策の教訓が現代にもどう影響しているかに触れた国際的研究。
アメリカ国立公文書館(NARA): *Records of the U.S. Tariff Commission and Congressional Hearings on the Smoot-Hawley Act*
   - 法案成立時の議会証言・資料アーカイブ。
西沢保『世界恐慌とアメリカ経済――スムート・ホーリー法の影響分析』岩波書店、1998年。
   - 日本語文献でスムートホーリー法とアメリカ経済の関係を詳述。

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