日本の選挙制度をわかりやすく解説
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日本の選挙制度 |
日本では国政から地方自治体まで様々な選挙が行われています。本記事では、衆議院・参議院・地方選挙の違いや仕組みに加え、公職選挙法違反についても候補者・有権者別に詳しく解説します。
選挙資格について(選挙権・被選挙権)
日本の選挙では、「選挙権(投票する権利)」と「被選挙権(立候補する権利)」の2つが存在します。それぞれに年齢や条件が定められています。
選挙権(投票する資格)
- 満18歳以上の日本国民
- 選挙人名簿に登録されていること
- 登録のためには、住民票がある市区町村に引き続き3か月以上居住している必要があります。
選挙別の備考
選挙の種類 | 備考 |
---|---|
衆議院議員総選挙 | 全国の18歳以上が対象 |
参議院議員通常選挙 | 同上 |
地方選挙(知事、市町村長など) | 当該自治体に住民票が必要 |
被選挙権(立候補する資格)
選挙の種類 | 年齢要件 | その他条件 |
---|---|---|
衆議院議員 | 満25歳以上 | 日本国籍必須 |
参議院議員 | 満30歳以上 | 同上 |
都道府県知事 | 満30歳以上 | 当該都道府県在住である必要なし |
市区町村長 | 満25歳以上 | 同上 |
地方議会議員(都道府県・市区町村) | 満25歳以上 | 当該自治体在住の必要は原則なし |
選挙資格が停止される例
- 禁錮以上の刑に処され、その執行中の者(選挙権・被選挙権ともに停止)
- 公職選挙法違反等で公民権停止中の者
- 後見開始の審判を受けている者(一定の条件下で制限される場合あり)
国政選挙(衆議院・参議院)
衆議院の特徴
- 「政権を決める院」:与党が過半数を取れば、内閣総理大臣を指名できる。
- 「スピード感」重視:任期が短く、世論の変化を反映しやすい。
- 「解散あり」:総理大臣の判断で解散・総選挙が行われる。
- 「内閣不信任決議」が出せる → 政権交代のきっかけになる。
● 衆議院議員総選挙
- 任期:4年(解散あり)
- 定数:465名(小選挙区289名、比例代表176名)
- 選挙制度:小選挙区+比例代表(ブロック別)
- 特徴:政権交代に直結する重要な選挙
参議院の特徴
- 「熟議の府」:任期が長く、慎重な政策審議ができる。
- 「解散がない」:政局に左右されにくく、安定している。
- 「半数改選制」:一度に全議員が入れ替わることがない。
- 「専門性」:学者、芸能人、元官僚など多様な人材が出馬しやすい。
● 参議院議員通常選挙
- 任期:6年(3年ごとに半数改選)
- 定数:248名(選挙区148名、比例代表100名)
- 選挙制度:都道府県ごとの選挙区+全国比例
- 特徴:安定的な政策審議を担う院、解散なし
地方選挙
● 都道府県知事選挙
- 任期:4年
- 直接選挙で選ばれる地方自治体のトップ
● 都道府県議会議員選挙、市区町村議会・市長選など
- 任期:4年
- 議会議員は地元の代弁者として政策立案
- 市区町村長は地域行政の責任者
衆議院と参議院の違い(比較表)
項目 | 衆議院 | 参議院 |
---|---|---|
定数 | 465人 | 248人 |
任期 | 4年(解散あり) | 6年(解散なし・半数改選) |
被選挙権 | 25歳以上 | 30歳以上 |
主な役割 | 政権を担う | 政策審議・チェック |
優越の有無 | あり(衆議院の優越) | なし |
衆議院はスピードと変化、参議院は安定と熟議。 二院制により、バランスの取れた政策運営が目指されています。
衆議院の「優越」とは?
以下のような場面で、衆議院の決定が優先されます:
-
法律案の議決:両院で異なる結論 → 衆議院が再可決すれば成立
-
予算の議決:衆議院が先に審議し、決定権も上
-
条約の承認:衆議院が優先
-
内閣総理大臣の指名:両院で異なる場合 → 衆議院の指名が優先
選挙に出馬する際の費用とは?
選挙に立候補するには、相当な費用がかかります。特に「供託金」は立候補時に必ず納める必要があり、一定の得票を得られなければ没収されます。そのほかにも、事務所、宣伝、人件費など多岐にわたる出費があります。
① 供託金(立候補時に納める費用)
選挙の種類 | 供託金の金額 | 備考 |
---|---|---|
衆議院(小選挙区) | 300万円 | 比例重複立候補の場合、別途600万円必要 |
衆議院(比例代表) | 600万円 | 政党がまとめて供託 |
参議院(選挙区) | 300万円 | 得票率10%未満で没収 |
参議院(比例代表) | 600万円 | 政党提出、個人不可 |
都道府県知事 | 300万円 | 得票率10%未満で没収 |
市区町村長 | 50万円 | 比較的少額 |
地方議員(市区町村議会など) | 30万円 | 最も低額 |
② その他の選挙運動費用
費用項目 | 概算金額 | 備考 |
---|---|---|
選挙事務所の設置費 | 30万〜100万円以上 | 賃貸料・光熱費など |
人件費(運動員・スタッフ) | 数十万〜数百万円 | ボランティア扱いだが実費がかかる |
ポスター・印刷物費 | 50万〜150万円 | ビラ、選挙公報、ポスターなど |
街宣車・スピーカー等 | 30万〜100万円以上 | レンタル代、運転手代、燃料費 |
SNS・WEB広告など | 数万円〜上限なし | 動画編集や広告出稿など |
③ 公費負担制度(一部費用が補助される)
一部の選挙では、ポスターの印刷費や掲示場への貼付費用、選挙公報作成費用などが公費で負担される制度があります。
ただし、一定の得票率(例:10%以上)を下回ると、公費補助の対象外となります。
まとめ:出馬にはいくらかかる?
選挙の種類 | 概算総費用 |
---|---|
市区町村議員選挙 | 100万円〜300万円 |
都道府県議会議員 | 300万円〜800万円 |
市長・町長選挙 | 500万円〜1000万円 |
衆議院・参議院選挙 | 1000万円〜2000万円超 |
特に無所属や新人の場合、政党からの支援がないため全額自己負担になるケースが多く、出馬には大きな経済的リスクが伴います。
しかし、目立ちたい、思い出づくり、など安易に出馬できる「公職選挙法」も考えものです。
公職選挙法違反について
候補者側の主な違反
- 買収:現金や物品の提供で投票依頼(例:現金、商品券、ビール券など)
- 供応:飲食の提供(例:集会での酒・食事接待)
- 戸別訪問の禁止:家々を直接訪ねるのは違法
- 広告宣伝の制限:ビラ・ポスターの数や規格を超える宣伝は禁止
- 虚偽表示:経歴詐称や他人になりすます行為
- 投票日当日:陣営スタッフが「◯◯候補に投票をお願いします」
- 投票日当日:候補者が「投票日です。皆さんの意思を示しましょう(候補名なし)」
有権者側の違反
- 買収の受取:現金・物品を受け取って投票すると違法
- なりすまし・二重投票:重大な不正行為
- ネットでの誹謗中傷:公選法の対象になることも
- 顔にヒゲを描く、目線を入れる、文章を加筆:選挙の自由妨害
- ポスターを破る、剥がす、上から別の紙を貼る:器物損壊罪
- 演説者の声をかき消すような大声のヤジ・罵声:選挙の自由妨害
- スピーカーやメガホンを使って妨害:選挙の自由妨害
- 故意に怒鳴り続けたり、接近して威圧・脅迫的に振る舞う:選挙妨害罪
主な罰則
違反内容 | 罰則の例 |
---|---|
買収 | 3年以下の禁錮または50万円以下の罰金 |
供応 | 2年以下の禁錮または30万円以下の罰金 |
公民権停止 | 一定期間、選挙権・被選挙権の停止 |
選挙運動と政治活動の違い
- 選挙運動:特定の候補者に「投票を依頼」する行為 → 選挙期間中のみ合法
- 政治活動:政党の広報活動、支援者との交流など → 通年で可能(ただし制限あり)
まとめ
日本の選挙制度は民主主義の根幹をなす重要な仕組みですが、近年ではその公正さや信頼性に対して懸念の声も聞かれます。候補者・有権者の双方が公職選挙法を厳格に守ることこそが、選挙の公平性と国民の信頼を確保するために欠かせません。
総務省|選挙の仕組み
e-Gov法令検索|公職選挙法(昭和25年法律第100号)
総務省|よくある選挙Q&A
中野区選挙管理委員会|選挙運動と政治活動の違い
NHK選挙Web(衆議院・参議院選挙の過去結果・制度概要)
人事院|参議院議員の選出・任期などの制度
※内容は2025年7月現在の情報に基づいています。最新の法改正や選挙制度変更がある場合は、各公式サイトをご確認ください。
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