拙速なデジタル化とその影
近年、日本政府は「デジタル社会の実現」を掲げ、行政手続きの電子化、紙書類の廃止、アナログ規制の撤廃などを一気に進めています。表向きは「利便性向上」「効率化」「省人化」ですが、その裏で取り残される人々が急増しています。
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拙速なデジタル化とその影 |
電子化・デジタル化政策の主な内容
- 行政手続きのオンライン化(紙の申請書廃止)
- FAX・ハンコなどアナログ機器の排除
- マイナンバーカードへの一元化(健康保険証、口座情報など)
- 自治体の窓口業務のデジタル化(セルフ端末化)
これらの政策は菅政権以降、「デジタル庁」の設立(2021年)を皮切りに加速され、岸田政権でもさらに推進されています。
問題点1:高齢者や障がい者が“見捨てられる”
IT機器やインターネットに不慣れな人々にとって、紙の廃止や窓口削減は死活問題です。全国社会福祉協議会の調査(2024年)では、75歳以上の高齢者のうち、スマホ操作に「不安がある」と答えた人が68.4%に上っています。
さらに、視覚障がい者や認知症患者などの障がい当事者にとっては、「電子化された情報にアクセスできない」ことが日常的に起こっており、バリアフリーの理念にも反しています。
問題点2:急激な変化が現場に混乱を招く
2023年に実施されたマイナ保険証の導入では、病院や薬局の現場が混乱。システム障害や保険情報の誤登録などが多数報告され、命に関わる医療の現場で問題が浮き彫りとなりました。
この混乱を受けても政府は「紙の保険証廃止」の方針を変えず、国民の不安はむしろ増幅しています。
問題点3:プライバシー・情報漏洩の懸念
電子化により個人情報が集中管理されることで、漏洩リスクやサイバー攻撃への不安も高まっています。特にマイナンバー制度における口座ひもづけ問題では、同意なしの情報登録やトラブルが相次ぎ、政府に対する信頼は大きく揺らぎました。
世論調査:国民の「不安」が多数
- NHK世論調査(2023年):マイナンバーとデジタル化に「不安を感じる」…60%
- 朝日新聞(2024年):「紙の保険証を残すべき」…70%
- 共同通信(2023年):「デジタル庁の拙速な対応に疑問」…62%
これらの調査結果からも明らかなように、拙速なデジタル化に懸念を持つ国民が多数を占めています。
市民の動きと提言
- NPO「デジタル社会に異議あり」:高齢者や障がい者への配慮を求め、紙書類の併用を提言
- 市民団体「紙の権利を守る会」:保険証廃止に反対する署名運動を展開(約50万筆)
- 全国の医師会・薬剤師会:マイナ保険証の義務化中止を要請
それでも政府は進める?
岸田政権は「誰一人取り残さないデジタル社会」と標榜していますが、実際には配慮なき一律電子化が進行中です。民意を踏まえた「併用・移行期間の延長」「現場の声を活かす制度設計」が求められています。
まとめ:必要なのは“多様性”と“配慮”のある政策
デジタル化そのものを否定する声は多くありません。問題はその進め方です。すべてをオンラインにし、紙や対面窓口をなくすことが「効率化」なのか。国民の安心と信頼を犠牲にした電子化は本末転倒ではないでしょうか。
出典・参考文献NHK世論調査(2023年)「マイナンバー制度に関する意識」
朝日新聞デジタル(2024年)「紙の保険証存続の是非」
総務省「デジタル化推進白書」(2023年)
NPO法人「デジタル社会に異議あり」活動報告書
厚生労働省「マイナ保険証制度の検証レポート」(2024年)
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