知らず知らずに操られる感情――「戦争プロパガンダ10の法則」を読み解く
![]() |
戦争プロパガンダ10の法則 |
アンヌ・モレリの著書『戦争プロパガンダ10の法則』は、歴史の中に潜む世論操作の巧妙な手口を、驚くほど鮮やかに描き出しています。敵を徹底的に悪とし、自国を絶対的な正義として仕立て上げる10の法則。それは、第一次世界大戦の時代から現代の紛争に至るまで、形を変えながらも脈々と受け継がれてきた、人心掌握の恐るべき技術です。
この記事では、この10の法則を、私自身の解釈を交えながら、現代社会を生きる私たちにも理解できるよう、分かりやすく解説していきます。情報が洪水のように押し寄せる現代において、この法則を知ることは、私たち自身を守るための重要な武器となるはずです。
第1章:「われわれは戦争をしたくない」
どの国も口では「戦争なんてしたくない」と言います。でも実は、国民をその気にさせるためのプロパガンダが裏で動いてるんです。例えば、政府やメディアが「平和を愛する国」というイメージをアピールする一方で、戦争を正当化する空気を作り上げたりします。
「平和」という言葉が出てきたら、ちょっと立ち止まって疑ってみるのも大事かも。
第2章:「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
戦争が始まると、「全部敵が悪い!」と責任を押し付けるのが定番。自分たちは被害者で、敵が一方的に仕掛けてきた悪者だというストーリーをでっち上げます。
これで国民が「仕方ない、戦うしかない!」と団結する流れに持っていくわけです。
第3章:「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
敵のリーダーを極悪人に仕立て上げるのもよくある手。メディアで「残虐非道」「邪悪そのもの」みたいなイメージを植え付けて、「こんな奴らと戦うのは正義だ!」と国民をその気にさせます。
例えば、日本で中国、ロシア、北朝鮮の指導者に対するネガティブな報道は、これもその一環?と疑ってみてもいいかもしれません。
第4章:「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命の為に戦う」
戦争の目的をカッコいい大義名分で飾るのも鉄板。「土地や権力のためじゃない。正義や自由を守るためだ!」なんて言い張ります。でも実際は、偽りの正義で国民を騙してるだけの場合も多い。
高尚なスローガンが出てきたら、その裏に隠された意図を考えてみるのが賢明です。
第5章:「われわれも意図せざる犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」
自分たちの犠牲は「仕方ないミス」にして、敵は「わざと残虐行為をしてる」と非難する戦略。例えば、空爆で民間人が死んでも「偶発的な事故」と片付け、敵が同じことをしたら「許されない蛮行」と大騒ぎします。
歴史上、自国民を犠牲にして敵のせいにする自作自演もありますね、最低です。
第6章:「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
敵が汚い手を使ってると非難するのもお決まり。自分たちのやり方は正しくて、敵はズルいって印象を与える戦略。まるで子供の言い訳です。でも実際は、どっちも似たようなことしてる場合がほとんどなんですよね。
第7章:「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」
自分たちの損害は大したことないけど、敵には大打撃を与えてると誇張する戦略。「よっしゃー!」と国民の士気を高めて、勝利ムードを演出する。
戦時中の「我が軍大勝利!」みたいなニュースの連発は、まさにこの法則そのものです。
第8章:「芸術家や知識人も、正義の戦いを支持している」
有名な文化人やインテリが戦争を応援してるように見せるのも一つの手。「頭のいい人やセンスある人まで賛成してるなら間違いないよね」って国民に思わせる戦略。同調圧力をうまく使った狡猾なやり方ですね。
権威ある人の声が揃って聞こえてきたら、裏を疑う癖をつけてもいいかも。
第9章:「われわれの大義は神聖なものである」
戦争を神聖な使命に仕立て上げる戦略。宗教や高い道徳観を持ち出して、「戦うことは崇高で素晴らしい」と感じさせます。命をかける価値があると思わせるわけです。
昔の日本だと「天皇のため」「国のため」が神聖視されてましたよね。
第10章:「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」
戦争に反対したり疑う人を「裏切り者」扱いするのもよくある戦略。「みんなで団結して戦うべきなのに、お前は敵の味方か!」と同調圧力をかけて、反対意見を封じ込める。戦争中って、少しでも批判すると袋叩きにされる空気が漂います。
ナイラ証言が示すプロパガンダの恐ろしさ
1990年、イラクのクウェート侵攻後、「ナイラ」と名乗る少女が米議会で涙ながらに語ったイラク軍の残虐行為の証言があります。
後に彼女がクウェート大使の娘であり、話が虚偽と判明。広告企業ヒル・アンド・ノウルトンが仕組んだプロパガンダとして、湾岸戦争への米国民の支持を煽った例とされています。
平和を望めば望むほど、平和って大義が、戦争に向かっていくんですよ。
「もう、火は見たくない」と言いながら火を点ける。
【教訓】感情を揺さぶり、分断を生む情報に冷静な目を
「戦争プロパガンダ10の法則」は、情報を操って敵を悪者に仕立てたり、味方を正当化するテクニック。これって今ではSNSなどでも、頻繫に使われています。感情煽って分断作るのなんて日常茶飯事です。
だからこそ、私たちは常に冷静な視点を持ち、情報の真偽を見抜く「眼」を養う必要があるのです。
Anne Morelli(アンヌ・モレリ)著『戦争プロパガンダ10の法則
※第一次・第二次世界大戦、湾岸戦争などに見られるプロパガンダの法則を解説した基礎文献。
小笠原みどり訳『戦争プロパガンダ10の法則:21世紀の戦争とメディア』作品社、2015年
※アンヌ・モレリの原著を日本語訳した決定版。
Kuwaiti Girl Tells of Atrocities by Iraqis. New York Times, October 11, 1990.
※「ナイラ証言」に関する当時の報道記事。
MacArthur, John R. Second Front: Censorship and Propaganda in the Gulf War. University of California Press, 1993.
※湾岸戦争時に行われたメディア戦略やナイラ証言の内幕を詳細に記述。
「戦争とメディア」朝日新聞「戦争とジャーナリズム」特集(2003年)
※日本における報道と戦争の関係を検証するメディア特集。
0 件のコメント:
コメントを投稿
コメントはこちらからどうぞ。